桜に置いてかれてる
今週のお題「お花見」
足音もなく、満開になっていた桜に、今年は置いていかれた気持ちになってる。
もう、そんな季節なのか。
桜なんてすぐ散っちゃうのに、去年は嬉しかった。誘う口実が出来たなあと喜んでいた。
「桜が見頃だよ」
「お花見行こうよ」
今は自分の立場がぐらぐらしていて、歓迎する気持ちじゃないから。だから置いていかれた気持ちになってる。
まだ、春じゃなくてもいいんじゃない?
まだ、冬物のコート出しっぱなしだよ。
時間がどんどん過ぎていく。
彼氏と、食べ物を分け合いっこするのが好きだった。当然そうするのが当たり前だと思ってた。
桜の横に並んだテキ屋で、焼きそばを二個、たい焼きを二個買ってきた彼氏をみて、前の人との違いを感じた。
「そうじゃないのに」
「二人で分け分けするのが好きなのに」
とぼんやり思った。だけど、その人自身が好きだったから何も言わなかった。
映画館でジュースひとつ、ポテトひとつを二人でつつきながら観る。
別れた後、ポテトはこんなに多かったんだなあって、泣いた。思えばあの頃はわざわざ泣く理由を探していた気がする。ならない携帯とか、一緒に買い集めたグッズとか、乗り換えた女の幸せそうなSNSとか、パブロフの犬のように、見るたびよだれを、じゃない、泣いてた。
思い出さなくなるのは、時間だけじゃない。自分で「元彼検索しない」目標を決めて、出来るだけ考えないように忘れる努力をした。めまぐるしい日々に飲み込まれて、それは成功した。彼の誕生日も2日後に気づいて、自分にびっくりした。お前ほんとにあいつのこと好きやったんかよ。
もう大分時間が経ったね。今会ったら多分笑って話せるよ。結婚おめでとう!って言えるし、いじることもできる。ライブおめでとう!って言えるし、夢叶ったねえって一緒に笑い合える。
直後だったら女もろとも刺してた。良かったね会わなくて。
一緒に笑い合える条件としては、以下をしないことだ。
気まずさを出す
ちょっとでも元サヤに戻ろうとする
あの頃の俺らをもう一度みたいな雰囲気出す
やると、私のシャッター閉まって開かなくなって、のっぺりとした作り笑いを延々と行い、表面上の笑い合えたを演出するから。
おめーの時間進ませろよ、何のために年取ってんだよあほか。いつまで私が当時のままだと思ってんだ